フリーランスになったら、保険証ってどうなるの?健康保険?国保?任意継続?支払いが高くなるの?何から何までよくわからない。
こんな人の疑問を解決する記事です。
公務員は共済組合に加入していて、そこから保険証が発行されています。
- 病院での診察台が3割負担になる
- 高額療養費制度(入院などで医療費が高額になった場合一定金額以上は払わなくてよい)が使える
公的医療保険としてこれらの給付をうけることができますね。
公務員って保険証を持つための保険料をどこで払ってるの?
長期掛金・短期掛金、という名目で給料から天引きされているのが公務員の社会保険料です。以下のようにざっくり理解しておきましょう。(本当はもといろいろな内容がセットになっています)
- 長期掛金→年金をもらうために払う
- 短期掛金→健康保険証をもつために払う
さて、今回は公務員や教員を辞めてそれまでの保険証を返納し、フリーランスになった時の健康保険証(公的医療保険)はどのようにして手続きして受け取ればいいのかについて解説していきます。
転職をする場合は転職先の健康保険に加入することになるので特に問題ないのですがー。
フリーランスの公的医療保険の組み方は以下の5パターンが考えられます。
私は辞めた年の年収(総支給額)が750万円程度でしたが、試算してみると退職した年(2023年)の保険証をもつための保険料は以下のようになります。
メリット | デメリット | 年間保険料(年収750万で退職の年) | |
①国民健康保険 | 所得額に応じて増減 | 家族を扶養に入れられない 収入に応じて高くなる | 630,000円 |
②家族の扶養に入る | 保険料0 | 家族が会社員等である必要 一定以上稼ぐと外れる | 0円 |
③任意継続制度 | 公務員の手厚い保障 家族を扶養に入れられる 途中解約可能 | 2年までしか加入できない | 530,000円 |
④文美国保 | 保険料一定 稼いでも保険料変わらない | 条件や審査あり 手続きが面倒 家族を扶養に入れられない | 300,000円 |
⑤マイクロ法人設立 | 保険料を最安にできる 家族を扶養に入れられる | ランニングコストがかかる 法人設立の知識・手間 決算提出の手間 | 72,000万 |
んー、ややこしすぎる!安い方がいいのよね?
私も教員をやめると決めるまでは保険証関係の知識が全くありませんでしたが、自分が退職するにあたってかなり真剣に調べてわかったことをまとめました。
加入するものによって保険料や保険の内容が違うので、家族構成や収入額などから考えて自分に最適なものを選ぶ必要があります。
わからない人目線でわかりやすく解説していくので、是非最後までお読みください。
- 40代後半・独身男
- 大学院修了後一年浪人の後、教員採用試験に合格し18年勤める
- 職場での人間関係や働き方に疑問を感じ、人生のこれからについて考え直す
- 2020年コロナがきっかけで副業を始める、2021年には副業収入6桁超え
- 教員を辞めることを決意、2023年3月に退職、5月には公務員時代の月収を超える
- 現在フリーランスをしながらマイクロ法人2期目
健康保険制度(公的医療保険)の基礎知識
まず、「健康保険」「共済組合」と「国民健康保険」(国保と呼ばれます)は意味が違います。
これに加入していることで健康保険証をもらえることはどれも一緒ですが、加入できる人や保険内容に違いがあります。
加入できる人 | 保険料の支払い | 扶養制度 | 各種手当 | |
健康保険 | 会社員 | 半分は会社が払う | あり | あり |
共済組合 | 公務員 | 半分は自治体が払う | あり | あり |
国民健康保険 | 自営業者など | 全額自分で払う | なし | なし |
族の一人が健康保険や共済組合などの扶養制度のある社会保険に加入している場合、その配偶者や子供などの家族(詳しくはこちら)が保険料を払わなくて済む制度
各種手当とは、傷病手当金や出産手当金のことで、国民健康保険ではもらうことができません。
また、会社員や公務員の公的医療保険などの社会保険料の半分は勤め先が払うことになっていて、自分の給料から引かれるのは半分だけ。
こうみると、国民健康保険は以下の点でデメリットの多い選択肢になります。
- 保険料が高い
- 保障もすくない
- 扶養の制度がない
できるなら国民健康保険に入るのは避けたい…
健康保険制度の選び方
選ぶ際は以下の視点を考えながら最適なものをチョイスしましょう。
- 扶養する家族はいるのか
- どんな職種でフリーランスになるのか
- 退職したあとフリーランスとしてすぐに収入があるのかどうか、今後増えるのか
フリーランスの収入が少ない場合、家族の扶養に自分が入れるなら保険料が0になる扶養に入ってしまうと良いです。
フリーランスになった後も家族を扶養する場合(家族の健康保険料が無料になる)は③の任意継続制度や⑤のマイクロ法人を選択するのが良い選択になります。
フリーランスで仕事をする職種が該当する場合には文美国保に加入することができ、保険料が収入によらず一定になります。
このように、家族の有無や退職した後にとりくむ職種、退職した後にどのくらい稼げるようになるのかによって選択肢は人それぞれになります。
①国民健康保険
国民健康保険は略して「国保」と呼ばれています。
国民健康保険の場合は前年の1月〜12月の所得によって保険料が決まるので、公務員を退職後に国民健康保険に移行すると退職した年の保険料がとても高くなることを覚悟しなければなりません。
逆に言うと収入が少なければ支払いが少なくなるのが国民健康保険なので、今後収入が少ない期間が続く方は国民健康保険が良い選択になり得ます。
前年度の収入から今年の保険料が計算されるというのがポイント。
2023年3月で退職する私の2022年の総収入は750万程度でした。
それを元に試算(住んでいる自治体のHPに計算方法は載っています)してみると、退職後すぐに国民健康保険にした場合には年に63万円支払わなければならない計算になりました。
ちなみに私は独身ですのでこの保険料に収まりますが、国民健康保険は扶養の仕組みがないので、配偶者や子供などの家族の健康保険料も追加で払う必要が出てきますので注意が必要です。
扶養していた家族がいる場合には国民健康保険は避けたいですね。
ただし、退職する2023年の1月〜12月(3月までは教員)の総収入が少なければ、それに応じて2024年の国民健康保険額は少
国民健康保険に加入するための手続きは以下です。
- 健康保険等資格取得(喪失)証明書を取得する
- 健康保険等資格取得(喪失)証明書と身分証明書を持って区役所で手続きする
健康保険等資格取得(喪失)証明書は共済組合に請求するともらえます。
なお手続きは共済組合の脱退後14日以内に行うこと、となっています。
②家族の扶養に入る
配偶者や家族が会社員として働いていて、フリーランス初年度の収入が130万円以下の場合ならば、家族の扶養に入ることができ、健康保険料も国民年金保険料も支払う必要がなくなるというのが扶養に入る最大のメリットです。
もしフリーランスとしての収入の見通しが立っていないなら、扶養に入るのも一案ですね。
ただし扶養に入れるのは収入が低い間だけ。今後仕事をせずに家族に頼って生活するならともかくフリーランスとして収入をと考えるなら130万円はすぐに超えてくるので、一時的な対策として考えておいた方が良いです。
被扶養者になるには扶養する側(家族や配偶者)の勤め先に手続き方法を確認してください。被扶養者になった日から30日以内に手続きをすることとなっています。
③任意継続制度を使う
公務員時代の共済組合の公的医療制度をそのまま2年間まで継続することができるのが任意継続制度です。今までは加入すると2年間は継続しなければならなかったのが、その制限がなくなり、途中解約も可能になっています。
- 超手厚い公務員の保障を継続できる
- 国民健康保険に加入する場合よりも1年目は安い場合がある
以下のサイトで保険料の計算ができます。
年収750万円の私の場合、任意継続制度を使った場合の年間に支払う保険料はだいたい53万円程度になりました。
自分の場合は扶養する家族もいないので、退職後すぐに国民健康保険に加入するよりは任意継続にする方が安い結果になりました。
任意継続制度は扶養制度があるので、配偶者や子どもなどの家族の健康保険料は支払わなくて済みます。退職後も家族を扶養に入れたい方は任意継続制度が選択肢に入ってくるでしょう。
任意継続制度に加入するには、公務員を退職した後20日以内に申請書を作成し、共済組合へ提出することになります。
退職時の説明会を実施している自治体も多いです。なければ事務職員に相談しましょう。
④文美国保を使う
文美国保とは「文芸美術国民健康保険組合」のこと。
国民健康保険は収入が多ければ多いほど保険料が高くなりますが、文美国保に加入すると保険料は月20,000円〜25,000円程度と一定になるのが最大のメリットです。
割安に健康保険に加入することができ、年にして24万〜30万円程度です。
ただしデメリットもあります。
- 扶養の制度がないので家族がいると割高になる可能性
- 指定団体に所属し審査に通らないと加入できない
- 確定申告していない公務員は申請できない
「文美」というだけあって、文芸・美術の分野で仕事をしていないと加入できないのが文美国保です。
審査には「作品の提出」や文芸の分野で収入を得ていることを証明するための「確定申告の控え」の提出が求められます。
すでに副業などで収入を得て確定申告をしたことのある人しか加入できません。
詳しくは以下のHPをご覧ください(スーパーレトロなHPです)
- 加入申込書
- 加盟団体証明書
- 所得税の確定申告書B控え
- 作品例
- 住民票
- 預金口座振替依頼書
兼業申請でOKもらっているか、コッソリ副業して確定申告している公務員の方なら退職してすぐこの方法が使えるかもですね
⑤マイクロ法人を設立する
最後は法人を設立して健康保険料を安くする方法になります。
私はこの方法をとる予定でいます。
方法がかなり複雑で、かなり手間も取られる方法になりますが、この方法でいくとなんと月々の健康保険料が6,000円程度に抑えることができます。
破格の安さ!裏技っぽいけど、違法とかじゃないわよね?
この方法は知る人ぞ知る方法でリベラルアーツ大学の動画で話題になり、広まっている方法です。
健康保険料は基本的に収入が多ければ高くなるのですがマイクロ法人を設立する方法は以下の方法で健康保険料を最小に抑えます。
- フリーランスの収入とは別に収入をもうひとつ作る
- もうひとつの収入で社員(社長)が自分だけの小さな法人を設立する
- 社員(社長)の収入を最小に抑えることで健康保険料が安くなる
自分の中で「フリーランスとして働く自分」と「法人の社長としての自分」を設定するというこの方法。
収入が多いメインの仕事をフリーランスとして行い、社会保険料を安く抑えるために別のビジネスで月80,000円ほどの収入のミニマムな法人を設立します。
フリーランスとは別業種である必要があります。
マイクロ法人を設立すると、このようなメリットがあります。
- 健康保険料が月6,000円程度と最安になる
- 家族を扶養に入れることもできる
- 国民健康保険よりも手厚い保険内容
- フリーランスとしてどれだけ稼いでも保険料が高くならない
①〜④の全ての方法のメリットを寄せ集めてデメリットを解消したようなすごい方法です。
退職前の年収750万円だった私が退職後に払う年間保険料で比べると以下になり、家族の扶養に入ることを除けばダントツでマイクロ法人が安いです。
国民健康保険 | 630,000円 |
任意継続制度 | 530,000円 |
文美国保 | 300,000円 |
マイクロ法人 | 84,000円 |
この方法が実はフリーランス最強の社会保険料対策となるのですが、デメリットも結構あります。
- フリーランスの業種とは別の業種で収入を得なければならない
- フリーランスでも法人でも決算書等を作成しなければならず、法人の決算はちょっとむずかしい
- 法人設立のための手続きが煩雑、設立費用もかかる
- 法人税や会計ソフト、などのランニングコストが年に10〜30万円ほどかかる
なんだかちょっと大変そう…。
せっかく保険料安くてもランニングコストで30万も払ったらかえって割高にならないの?
フリーランスで収入が少ない人はマイクロ法人のランニングコストが社会保険料の節約額を上回ってしまうので、損になってしまうことがあるので注意。
どのくらいの収入(所得)があればマイクロ法人にうまみがあるのかは以下の記事で解説しています。
扶養できる家族がいる場合にはマイクロ法人はかなりお得になりますので是非検討してくださいね。
マイクロ法人って何がいいの?何をすればいいの?と興味を持った方は以下のページもご覧ください!
【完全まとめ】マイクロ法人の作り方(仕組みから軌道に乗るまで完全網羅!)
公務員・教員を退職したときの健康保険制度の手続きの〆切
ここまでで紹介したプランを手続きする際の〆切をまとめておきましょう。
- 国民健康保険に加入する場合→退職した翌日から14日以内
- 家族の扶養にはいる場合→退職後5日以内
- 任意継続制度を利用する場合→資格喪失日から20日以内
- 文美国保に加入する場合→随時加入可能・毎月5日までに申請で次月から加入
- マイクロ法人を設立する場合→随時可能・設立できた月から加入
手続きが遅れた場合は自動的に国民健康保険に加入することになるので注意しましょう。
まとめ 結局どれに入ればいいの?
教員・公務員を退職した後に公的医療保険は紹介した①〜⑤のどれを採用するのか、最適なものは個々人で異なるのが難しいところ。
自分で電卓を叩いて試算してみるか、区役所で相談することをおすすめします
実際に切り替えるのは退職の前後になりますが以下の理由で退職&フリーランスになることを決めたらなるべく早めにプランを決めておきましょう。
- どのプランにするのか決めるのに時間がかかる
- 文美国保やマイクロ法人の場合は準備にも手間や時間がかかる
私はどれを選んだらいいんだろう?
先ほども書いたように、詳しくは自分で試算をするべきなのですが、おおまかに判断基準を示すと以下のようになります。
- 自分が家族を扶養する場合 → 任意継続制度orマイクロ法人設立
- 家族が働いていて自分の収入見込みが年130万未満 → 家族の扶養に入る
- 扶養する家族がなく、他と比べて安くなる場合 → 文美国保に加入
- とにかく健康保険制度を一番お得に安く加入したい → マイクロ法人設立
- どれにも当てはまらないor手続きが面倒 → 国民健康保険
退職前に最適なプランを計画しておきましょう!
- 保険証はいつ届くの?
-
マイクロ法人を設立した私は4月3日(4月1・2日が土日だった)にすぐに年金事務所で手続きをして4月12日に届きました。
個人事業主の方で5月になって届いた方もいるようです。
任意継続の場合、退職前の保険証をそのまま使える自治体や一旦返納して新しいものが来る場合など様々のようですね。
- 保険証のない期間に病院を受診した場合どうなるの?
-
保険証は退職や扶養に入ったあとなど、環境が変わった事後に手続きしなければいけないため、「保険証が手元にない期間」が発生する場合が多いです。その期間に病院を受診した場合、「一旦10割の受診費用を払って、保険証が手元に来たら病院窓口で返金してもらう」、「(見なしで)3割の受診費用を払い、保険証が手元に来たら病衣窓口に提示しにいく」などの方法があるようです。しかし受診した月に返金や提示が必要のようなので、保険証の発行はすぐ行なった方が良さそうですね。
コメント