今回は最近読んだFIRE関連の本を紹介したいと思います。
FIREとは?
資産(株の配当金や不動産収入・権利所得など)が生活費を超えることで「働かなくても必要なお金が入ってくる状態」になり、早期退職をする(できる)こと。
そういえば以前、実際にFIRE生活をしている元公務員の方にインタビューをしました。
というわけで、今回紹介する本です。
「1万回生きたネコが教えてくれた幸せなFIRE」はヒトデさんというブログ収入でFIREを達成された方のFIREに関する書籍です。
ブログ界では有名なヒトデさん。自分もこの方のブログを読んでブログを開設しました。
この本は、FIREの方法について詳しく書いてある本ではありません。
また、FIRE生活のキラキラ部分を紹介して夢見心地にさせてくれるような本でもありません。
「FIREした人に何度も飼われた経験を持つ喋るネコとの会話」という非現実的な設定の小説でありながら、主張される内容は極めて現実的です。
- FIREはそんなに簡単じゃないぞ
- FIREした後ハッピーになれない人もいるぞ
- FIRE生活を達成した後必要になるのはなんと「仕事」だぞ
「仕事辞めたいからお金貯めてFIRE目指す」という漠然とした考えに横槍を入れてくる本なんです。
そういう意味ではむやみやたらなFIRE称賛に反対する「FIRE・ちょまてよ論」と言える本でもあります。
ただし、FIREに対する否定的な意見だけを述べるのではなく、FIREを実際に達成し、FIRE仲間も多い著者ヒトデさんの「俺はFIREならこうするのがいいと思うよ」という考えが明確に書いてあります。
FIREがうらやましい、自分もできるかも?などと興味を惹かれている人は、他の書籍ではあまり語られていないFIREの側面をこの本で読んで知り、FIREに関する自分の思いをアップデートしてみるのも良いかもしれません。
個人的にはFIREについて考えるということに加え、人生で本当に何が大事なのかな、と改めて考えさせてくれる人生哲学的な本でもありました。
- 大学院修了後教員採用試験不合格で一年浪人の後、合格
- 音楽教員として18年勤める
- 職場での人間関係や働き方に疑問を感じ、人生のこれからについて考え直す
- 2020年コロナがきっかけで副業を始める、2021年には副業収入6桁超え
- 教員を辞めることを決意、2023年3月に退職、5月には公務員時代の月収を超える
- 現在フリーランスをしながらマイクロ法人2期目
実は著者にお会いしたことがありまして…
実は私、著者のヒトデさんにお会いしたことがあります。
お会いしたのは所属していたブログコミュニティのオフ会(今は卒業しました)。
ブログコミュニティの主宰者であるヒトデさんがサプライズでオフ会に顔を出してくれました。
挨拶しにいったら可愛い名刺をくれて、偉ぶらず、へりくだり過ぎず、柔らかい雰囲気を持ったお方でした。
ヒトデさんは会社員として働きながらブログを始め、2016年にはブログでの収入が月に100万円を超え(月に!)。
それ以降ずっと月100万円以上の収入を継続している(2020年には月に1,000万円を超えた)とのこと。
会社を退職し、今もブログで稼ぎながら、すでに稼いだお金を株などに投資。
ブログ収入が0になっても資産所得だけで生活できる状態となりここでめでたくFIREを達成。
- 自分がFIREしている
- FIREしている友人や知り合いも多い
- ブロガーだから文章も書ける
こういう経歴からこの本が生まれたのですね。
とはいえ、いくらブロガーだっていきなり小説書くなんてなかなか難しいんじゃない?
と、そんなことを思いながら読み始めた私ですが、結構スルスル読めて、ストーリーも面白いではありませんか。
あ、もしかして共著とかですか?との疑念が浮かび(性格悪い)、巻末の情報を見てみましたが「著者:ヒトデ」とだけ載っている。
マジで一人で書いてるじゃん。
いきなりこんなちゃんとした小説書くなんて、すごいなヒトデさん(海洋生物なのに)。
肝心の中身の話
この本のスタイルは解説書ではなく小説。
FIREしたい「智也」のもとに現れた「小鉄」という喋るネコとの会話を元に話が進んでいきます。
(あ、著者ヒトデさんは「茶太郎」というネコを飼っているので、ネコ小鉄のモデルはこのお猫様なのでしょう。)
ネコの小鉄は有名な絵本「100万回生きたねこ」よろしく、1万回転生する中で「FIREを目指し、達成した様々な人間」に飼われます。
小鉄はその転生の中で何人ものFIREの民たちの実態を観察してきました。
その経験からFIREを切望する智也と問答を繰り返し、智也はFIREに対する考えを深めて成長していきます。
読者は智也の成長を見ていくことで自然にFIREについても詳しく知ることができるという流れになっています。
FIREの実例紹介がおもしろい
この本にはネコの小鉄が過去に出会った、「FIREした人の実例」が6つ紹介されています。
きっと著者ヒトデさんの実体験や、知人の経験が元になった例なんでしょう。
- 支出を絞ったFIRE生活は幸せ?
- 「FIREするため」とめちゃくちゃに働く本末転倒な状況
- やっとFIREした後に現れる後悔
など、これからFIREを目指す人には想像しにくい実情が紹介されています。
「FIREして後悔」なんて、そんなことあるのか…?
ここではネガティブな内容ばかり紹介しましたが、不安を煽るような書き方ではなく、割とフラットな目線でメリットもデメリットも描かれていたので参考になりますよ。
インデックス投資でFIREする落とし穴
もう一つ面白かった視点が、インデックス投資に関すること。
FIREをする方法として最も多く挙げられるインデックス投資。これによってFIREする方法は簡単に言うと以下です。
- 全米や全世界の市場平均に積立投資することで効率的に資産を増やす
- 投資している資産のうち4%ずつ毎年使ってもお金はほぼ減らないor増える
- その4%が年間生活費を超えるまでお金を増やせればFIRE達成
他の方法でFIRE目指すよりはやるのが簡単だよね。
この「4%ルール」というものに従うと、年間200万円で暮らせる人がFIREするために必要な投資資金は5000万円です。
引き出す生活費の200万円以上に毎年増えるお金が多くなる確率が高く、使ってもお金が減りません。
この状態になればリアル人生ゲーム、アガりってわけね。
しかし、この方法は極めて「可能性が高いFIREする方法」であるけれども、「100%確実な方法」ではない、ということをこの本では指摘しています。
確率は低いかもしれませんが、今後世界の株価が下がり続けるということもあたりまえにありうるわけです。
インデックス投資でFIREすることの問題点は、今後の人生の波乗りをインデックス投資に預けてしまっている点。
自分の経済状況が世界の経済状況と連動することになり、自分ではコントロールできないのです。
それ(インデックス投資)に全てを賭けるのって、人生を使った壮大なギャンブルじゃないですか?
「1万回生きたネコが教えてくれた幸せなFIRE」より引用
「FIREするため」にも働き、「FIREした後」にも働く
FIREするために働くのはまだわかるけど、FIREした後にも働くってどういうこと?と思われるかもしれません。
仕事を辞めるためにFIREするんだよね?
著者のヒトデさんは最初はFIRE生活が楽しかったものの、段々とそれだけでは最高の人生にはならないことがわかってきたといいます。
実際に著者ヒトデさんも、著者の知人でFIREした人も、働かなくて良いはずなのに全員結局なんらかの仕事をしているそうです。
自由にも遊びにも趣味にも満たされない何かがあるそうで、虚無感を感じるそうです。
庶民からしてみたら「そんな虚無感、味わうくらいになってみたいわ」って思いますけどね…。
仕事を辞めたくて本業に加えて副業という仕事を頑張り、そしていざFIRE達成したら、今度はまた虚無らないように働く、ということになりますね。
完全無欠FIREは幻だったのか…?
とにかく仕事が嫌で嫌で仕方なく、そのために努力してFIREにを達成した自分が、実際のFIRE生活を経てたどり着いた結論が「楽しい仕事が必要」だったのは笑えてしまう。
「1万回生きたネコが教えてくれた幸せなFIRE」より引用
ここからわかるのは、ただただ働くこと自体がイヤという人は本当は少ないのではないかということ。
仕事しなくていいのに結局仕事してしまうんですから。
ということは、巷の人が仕事をやめたいと思う理由は「好きな風に働けていないから」ということになるんでしょうね。
①仕事して→②FIREして仕事辞めて→③FIRE後また仕事するのであれば、最初から③の仕事探せばよくないですか?というのが筆者の主張。
並々ならぬ努力をしてFIREにを達成したあと、結局虚無感に苛まれて、仕事を始めるのであれば、はじめからFIRE後にやるであろう仕事で食えるようになる方法を、並々ならぬ努力で探すほうがよいのではないだろうか?
「1万回生きたネコが教えてくれた幸せなFIRE」より引用
まとめ 何もかもが大丈夫だったら何がしたい?
FIRE前の仕事と、FIREした後に選ぶ仕事。
この2つの仕事の違いは「本当にやりたかったこと」かどうかではないでしょうか。
FIRE後なら最悪1円も稼げなくても、何ならちょっと赤字でも、仕事の内容・方法は好きに選べちゃいますよね。
好きなことをするだけなら仕事じゃなくて趣味でやれば?と思われるかもしれませんが、著者からすると「社会とのつながり」「目的や目標」「日常の刺激」「自己実現感」は趣味からは得にくいみたいです。
「足りなかったものは例え”社会とのつながり”、”目的や目標”、”日常の刺激”、”自己実現感”。これらは、(FIRE後の生活に)必ずつきまとってくる問題です」
「全部お金と時間だけあっても解決できないことかもしれないね」
「でも、これらをまとめて解決できる方法があるんです」
「え、それすごいじゃん!教えて」
「仕事ですよ」
「1万回生きたネコが教えてくれた幸せなFIRE」より引用
ここで本書のFIREに対する結論のようなことを言うとすれば、
× お金があれば働かなくて良い
○ お金があれば本当にやりたいことを仕事にできる
ということだと理解しました。
一周まわって「仕事はいいぞ」っていうことか…
この本でおすすめされているFIREに向けた作戦の一つは、FIRE後にやってもいいと思えるような仕事をFIRE前に始めること。
あなたがFIREを達成したとして、3年位好き勝手に遊んで、旅もして、遊び疲れた頃に、やりたくなる仕事はどんなことだろうか?それは果たして、FIREを達成した後じゃないと本当にできないことだろうか?
「1万回生きたネコが教えてくれた幸せなFIRE」より引用
本当に自分がしたい仕事を選んで尖らせていき、それが爆発してFIREできればそれこそ真のFIRE成功と言えるかもしれません。
でもそんなのうまくいかないんじゃないかって躊躇しちゃうよね…
そんな人にはこの本を読んで自分が一番クールだと思った智也と小鉄のやりとりを紹介してこの記事を終わりにしたいと思います。
「智也さんがごくわずかな天才じゃないなら、あの時と同じようにまずやってみて、当たり前のように失敗しながら、段々とできるようになればいいじゃないですか」
「でも、やってみて全然できなかったら?そんなの、惨めじゃないか」
「”スキルの習得に失敗したからお前は惨めだ”と、誰に言われるんですか?」
「1万回生きたネコが教えてくれた幸せなFIRE」より引用
そんな感じ!おわりっ
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