マイクロ法人ってよく聞くけどどんなものなの?
一言でいうと、マイクロ法人とは個人事業主(フリーランス)が高くなりがちな社会保険料を節約するために法人を運営すること、です。
お得なんだったらフリーランスはみんなマイクロ法人やった方がいいの?
フリーランス全員がやって得するものではなく、一定以上の収入がある人が得になります。
マイクロ法人で社会保険料を節約するには注意点もあり、しっかり計画してから設立しないと逆に損になることもあります。
この記事では、「マイクロ法人」と聞いて、「それって何?おいしいの?」くらいのまだ知識の少ない方に向けて、マイクロ法人を超わかりやすく解説していきます。
マイクロ法人の作り方完全解説記事はこちら
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マイクロ法人とは?しくみを解説
最初にマイクロ法人とは何か?そのしくみについて説明していきます。
社会保険料ってなんだっけ?
個人事業主は社会保険料が高くなりがちと言いましたが、まずは社会保険料について簡単に解説します。
日本国民が払わなければいけない社会保険料には以下の3種類があります。
- 年金保険料(年金もらうため)
- 健康保険料(病院で保険適用するため)
- 介護保険料(介護サービスをうけるため)
年金保険料については基本的にフリーランスであろうが法人を設立しようが同じ金額ですので、今回の記事では無視します。
健康保険料と介護保険料は基本的に収入が高い人ほど高くなります。
この2つを節約しようというのがマイクロ法人のもくろみです。
マイクロ法人で健康保険料が安くなる!
フリーランスの社会保険料ってどのくらい取られるの?
今回は39歳以下(介護保険料なし)の所得300万円のフリーランスを例としてみてみましょう。
所得(収入ー経費)300万円のフリーランスの健康保険料は、マイクロ法人をやるのとやらないのとでは以下のように違います。
マイクロ法人しない | マイクロ法人する | 節約額 | |
---|---|---|---|
(国民)健康保険料 | 291,235円 | 72,000円 | 219,235円 |
ひゃー、22万円近く節約できるのか!
実際は法人にかかるコストや手間もあるのでそれもひっくるめて比べる必要がありますけどね。
ここで紹介した節約額は所得300万円のフリーランスの人の場合の額。
前述したように健康保険料額は所得額によって変わるため、所得が少なくなると健康保険料が安くなり、結果節約額も小さくなります。逆により所得が多い人は節約額は大きくなります。
たくさん稼いでいる人がより社会保険料を節約できるってことね!
マイクロ法人の仕組み
なんで法人を設立すると社会保険料が安くなるの?
ここからは仕組みの話。
個人事業主(フリーランス)をしながら法人を設立するということは、「フリーランスの自分」と「法人社員の自分」という2つの立場を作ることになります。
2つの立場を作っても社会保険料は法人社員である自分にしかかからないのがミソです。
社会保険は個人ではなく、法人の社員として協会けんぽに加入することになります。
ここで思い出して欲しいのは健康保険料は所得に応じて変わるということ。
法人の所得を意図的に少なく調整し、社員(つまり自分)への給与も少なくするとどうでしょう。
社会保険料は給与の少ない自分に対して計算されますから、社会保険が少なくなるんです。
フリーランスの収入と合算して計算、にはならないんです。
もう一方のフリーランスでたくさん稼いでしまったとしても、法人社員の給与を低額にしておけば、健康保険料を年間72,000円(月6,000円強)の最低額に抑えることができるんです。
すごい…、これって違法ではないの?
このマイクロ法人を設立して社会保険料を節約する方法は違法ではありません。フリーの税理士さんもやっているくらい、知っている人はやっている方法になります。
- 個人事業主では稼ぎまくってオッケー
- 法人では収入を抑える
マイクロ法人は社会保険料を安くするためだけに存在する法人と考えてください。
個人事業主と法人の関係は?
フリーランスと法人、2つを並行してやるってことになるよね?
マイクロ法人で社会保険料を節約するには、個人事業主の仕事、法人の仕事、この2つを同時並行で行うことになります。
フリーランスで複数の仕事を行っていて、マイクロ法人を設立する場合はそのうちの一つをマイクロ法人の仕事に転用してもOKです。
個人事業主とマイクロ法人の関係としては以下の注意点があります。
- 個人事業主とマイクロ法人は違う種類の仕事にする
- 法人では一定の所得内に仕事を調整する
個人事業主と法人は同じビジネスは不可なので、ある程度違ったビジネスを行う必要があります。
両方ともWEBライター、とかはダメなんだね…。
また、マイクロ法人はほぼ社会保険料を節約するためだけの法人ですので、法人で一定以上稼いでしまうと法人税や社会保険料が上がってしまい、メリットがいかせなくなってきます。
マイクロ法人で行う事業の所得(収入ー事業経費)の理想は年間80万円くらいです。
このくらいの額の所得に調整できるような仕事をマイクロ法人に当てるとメリットの最大化が狙えます。
フリーランス:ブログ、YouTube(収入の変化がわかりにくい・大きく稼げる可能性)
マイクロ法人:WEBライター(収入額の調整がしやすい)
マイクロ法人を設立する対象となる人は?
個人事業主がマイクロ法人でのメリットを享受できます。
パラレルワーカー(非常勤勤務など)や普通の会社員・公務員などで会社の社会保険に加入している人は法人を設立しても社会保険料を安くすることはできません。
他で社会保険に加入してるならそれで済む話だもんね。
マイクロ法人のメリット
マイクロ法人を設立するメリットは以下です。
- 社会保険料の節約
- 給与所得控除が使える
- 経費の幅が広がる
- 扶養が使える
いくつか挙げましたが、メインは一つ目の社会保険料の節約です。
他のものはおまけのようなものだと思っておきましょう。
社会保険料が節約できる
マイクロ法人のメインのメリットが前述したようば社会保険料の節約です。
このためにマイクロ法人を設立するといって良いよね。
給与所得控除も使える
給与所得控除は「給与のうち、いくらか分は所得税がかからないようにしてあげるよ」というもの。
会社員・公務員の人は毎年この控除を受けているはず。
一般のフリーランスの収入は事業所得であり、「給与」はもらっていないので給与所得控除は使えません。
しかしマイクロ法人を設立すると、自分はマイクロ法人に勤める社員という立場になるので、給与所得控除が使えるんです。
自分の設立した法人から自分に支払われる給与に対して給与所得控除(55万円分)が使えます。
この範囲内であれば、役員報酬としてもらう自分への給与の所得税はゼロになります。
- フリーランスで普通に55万円稼いだら所得税が引かれる
- 役員報酬として受け取った55万円からは所得税が引かれない
「マイクロ法人の役員報酬額は45,000円が最適」と聞くのはここから計算されています。
45,000円×12ヶ月=540,000円で給与所得控除によって所得税がゼロになるギリギリのラインに設定してあるわけですね。
経費の幅が広がる
これに関しては自分はあまり使っていないのでよくわかっていないのですが…
- 住宅費用
- 出張費
- 車両にかかる費用
- 交際費
などで、フリーランスでは認められにくかったり、一部しか使えないような経費が幅広く使えるメリットがあるようです。
また役員報酬として自分に支払う給与も法人の経費となります。
役員報酬として流れてくるお金は法人側でも個人側でも税金が取られなくて済むわけだ。
扶養が使える
一般のフリーランスが加入する国民健康保険や文美国保などは扶養がないため、配偶者や子供がいる場合フリーランスの社会保険料はバカ高くなります。
マイクロ法人で社会保険に加入すると、協会けんぽに入ることになり家族を扶養に入れることができます。
本人の社会保険料の節約メリットに加えて子供や配偶者の社会保険料がかからなくなります。
扶養したい家族がいる人はマイクロ法人は無敵だね!
マイクロ法人のデメリット
マイクロ法人を設立するデメリットは以下になります。
- 手間がかかる
- 法人運用のコストがかかる
- 運用を間違えると節約どころか損になる
- 住所公開などのリスク
一つずつ説明していきます!
マイクロ法人は手間がかかる
マイクロ法人は設立する手間や、設立後の運営の手間があります。
設立する際の手間は以下があります。
- 定款やその他設立書類の作成
- 法人印購入やバーチャルオフィスの契約
- 資本金の預け入れ
- 登記申請
- 年金事務所への書類提出
- 税務署への書類提出
- 自治体への書類提出
- 法人口座解説手続き
設立後にも以下のような手間があります。
- 社会保険料支払い(毎月)
- 役員報酬支払い(毎月)
- ビジネスに関わる帳簿付け(適時)
- 源泉所得税の納付書の提出(7月と1月の2回のみ)
- 算定基礎届の提出(7月の1回のみ)
- 年末調整(1月)
- 決算処理と法人税の支払い(年1回)
項目の多さにウゲ…ってなるけど、大丈夫。全部このブログで解説しています。
また1年間ちゃんと運営できればマイクロ法人は結構楽になります。
手間をかけてでもマイクロ法人を運営するだけの金銭的メリットがあるかどうか見極める必要はありますね。
マイクロ法人運用のコストがかかる
マイクロ法人には金銭面でのコストもかかります。
設立した年:173,000円〜439,600円
2年目以降毎年:116,760円〜370,000円
マイクロ法人の維持費については以下の記事でまとめています。
決算を税理士に任せず自分でやるなど手間をかければコストは低く抑えられます。
マイクロ法人にかける時間とコストは天秤の関係にあります。
手間をかければ安く済むし、全部お任せにしたら高くなる…
もともと節約のために始めるマイクロ法人ですから、手間をかけてでもマイクロ法人のコストを下げたい人も多いと思います。
🔻以下のnoteでマイクロ法人のコストを最大100,000円以上節約する方法を記事にしました。
有料記事ですが、その元以上を十分に取り戻せる記事になっていますので是非ご覧ください。
マイクロ法人の維持費をもっと安くする裏ワザをこっそり教えます→こちらから
運用を間違えると損になる
あー、もうマイクロ法人面倒になったからお金払って会計全部まかせよっと
今年は個人事業主で全然稼げなかった…これってマイクロ法人をやる意味あるのか?
マイクロ法人の社会保険料節約メリットは個人事業主の所得が多ければほど大きくなり、少なければ小さくなります。
これに加えてマイクロ法人はやり方次第で維持費の額も上下します。
- フリーランス側での収入が激減した
- 会計が面倒で税理士にマイクロ法人の会計を依頼した
こういう感じだと、マイクロ法人をやった方が損という最悪の結果になることもあるため注意が必要です。
住所公開などのリスクがある
法人の設立の際に法人住所を登記しますが、この住所を自宅にすると、自宅住所が公開されることになります。
- 自宅住所を知られたくない
- 不特定多数が相手のビジネス
こんな人はバーチャルオフィスを借り、法人住所をバーチャルオフィスの住所にすれば住所バレを回避できます。
バーチャルオフィスを借りた分、維持費は増えてしまいますけど…いろいろ便利ではあります。
マイクロ法人でバーチャルオフィスが必要な人や、マイクロ法人におすすめの格安バーチャルオフィスを以下の記事で解説しています。
まとめ デメリットを超えるメリットがあるマイクロ法人
マイクロ法人について概要はつかめましたでしょうか?
自分のフリーランスとしての収入やメリット・デメリットを考えた上で、得が大きそうならマイクロ法人はおすすめです。
特に扶養したい家族がいる場合はマイクロ法人が得になる可能性は高いですよ
どのくらい稼いでいればマイクロ法人始めても大丈夫なのかしら?
マイクロ法人で得をするにはどのくらいの収入があればいいか、という損益分岐点について、自力決算した場合・税理士に依頼した場合に分けて以下の記事で詳しく解説しています。
マイクロ法人のランニングコストを思いっきり下げれば、損するリスク・得する額も大きくなります。そんなズルい方法を教えちゃいます↓
マイクロ法人の維持費をもっと安くする裏ワザをこっそり教えます→こちらから
参考になれば幸いです!
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